2010年に『JiLL Wreath Book』を出版された、山中真澄さんに話をうかがいました。
山中さんが店長を務める高知市小津町の「リースショップ・JiLL」におじゃまして、出版された経緯や、編集段階の苦労話など、当時を思い出しながらお聞きしました。
本を出そうと思ったきっかけは何でしたか?
著者が店長を務めるリースショップ・JiLL
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坂本
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本を出そうと思ったきっかけを教えてください。
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山中
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「リースショップ・JiLL」が10周年を迎えたのがきっかけですね。ひとつの節目として、久々に作品展をひらこうと思ったんです。その頃の私は、“きちんと花と向き合うこと”に飢えていました。それが出来ていない自分が許せない、そんな気持ちだったんですね。だから、頭も心も体もどっぷり花につかる時間をつくるための個展でもありました。
それでね。作っていくうちに、自分の年齢のこともあって、いつか作れなくなるかもしれない時のことを考えてしまって(笑)
そう思ったら、無性に形にして残しておきたくなってお嫁にいく子たちをキレイに写真に撮ってもらおうとお願いしました。
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坂本
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なるほど。「同じものは二度と作れない」とゆうわけですね。
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山中
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それでひとまず知り合いの写真家の方にきれいに写真に残していただくことにしました。
それでその写真をデザイナーさんに相談したら、小細工なしに、この写真の良さをストレートに出したらいいんじゃないかという意見をくださったんです。それでデザイナーさんと一緒にある程度つくりあげた段階で、知り合いから薦められたリーブルさんに相談したんです。
著者の山中真澄さん
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坂本
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「出版社としてのアドバイスをください」って、何でも素直に聞いてくださったのもよかったですね。
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山中
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それから一緒になって本当にかなりの時間をかけましたよね!
そもそも本って、普通どれぐらいでできるものなんですか?
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坂本
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結構かかります。半年とかはザラですね。長いですよね。
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山中
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すんなりハイこれで!って進められないですもんね。
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坂本
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そうですね(笑)自分の一生に一冊かもしれないって思いますからね。
ボツページの方が多いんじゃないですかね(笑)
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山中
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すんなり決まるところは決まるんだけど、何回も何回も納得できなくてやり直すページとかもあって。後からミスが出てきたりして・・
長かったけど、楽しかったです。
デザインの過程やいくつも作成した表紙装丁案を
大切にファイリングしている山中さん。
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山中
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この前、リーブルさんの経済産業大臣賞の祝賀会のときに、写真集「鳥たちの日々」を出してらっしゃる和田さんにすごくいいこと言っていただいたんです。
「3年に1回のペースで本を出しや!」って。
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坂本
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へー!
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山中
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もうわたしグサッときて(笑)すごく納得できたから心に残ってるんです。
そうするとこの一冊目の本も、より生きてくるじゃないですか。
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坂本
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確かにですね。
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山中
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それで先日も、手芸の世界で大手の「ユザワヤ」さんに作品を置いていただけないか電話で依頼したんですね。そしたら、「やまなかさんは本を一冊しか出されてませんよね。二冊目が出たらまた声かけてください」ってお断りされたんです。
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坂本
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へーーー!
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山中
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やっぱりね、一冊だけじゃ信用が・・・ということなんでしょうか。
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坂本
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一冊出される方って結構いらっしゃいますからね。
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山中
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そうなんですよ。でも二冊ってなかなか!
言いたいことは、この一冊に全部込めてしまったので、二冊目となると……。
……あ、でも二冊目もと思って、実はもう写真撮ってあるんです(笑)
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一同
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おおーーーーー!!(一同拍手)
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山中
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ユザワヤさんに言われてすぐ撮ったんです!すごいでしょ?(笑)
全然切り口の違うものを考えてるんですよ。お正月の作品をカメラマンに頼んで撮ってます。
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坂本
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なるほど。
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山中
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まったく一冊目とイメージは変わるんですけど。
お正月のリース等の作品をまとめた本って一冊もないんですよね。
大抵クリスマスリースがあって、後にお正月も少しだけ紹介されてたり。
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坂本
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確かにそうですね。
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山中
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でもそれに伴う文章がなかなか出てこないところです。
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坂本
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この本は、後ろのlessonの部分だけでもかなり価値はあると思いましたよ。
そこが気に入られて買われてる方も多くいらっしゃいました。
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山中
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そうそう!これ、デザイナーさんのおかげなんですよね。
わたしは初級・中級・上級の3つくらいで考えてたんですけど、デザイナーさん自身が、リースにハマってくださったから、「もっとlesson充実させましょう!」って。
まさにお客様の立場に立った意見を言ってくださいましたね。
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坂本
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うん。それほんとよかったと思います。
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山中
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全然つらいことはなかったんですが……、プロのデザイナーさんの良さがみたいという部分と、本当に自分が出したい部分との、バランスの取り方に悩みましたね。あまりにも自分の思い語るより、プロの方に良さを引き出してもらった方が、わたしの予想を越えるかもしれないと思って常に葛藤はありました。
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坂本
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なるほど。
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山中
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だから自分の素直な反応を分かりやすく出すようにしてましたね。
いいなと思ったらすごくほめるとか強弱つけてました(笑)
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坂本
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(笑)
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山中
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写真を撮るだけでなく、それから本になると、作品の良さがぐっと出ますよね。
こうして本にすると、それを見たお客様からフィードバックがあるじゃないですか。県外から来てくれたり、60歳近い女性がハマってくれたり、リース作りたくなって材料買いに来ました!という方がいたり。本をつくる過程も楽しかったけど、そこからもやっぱり楽しいですね。
「久しぶりに2000円近い本を衝動買いしました!」って報告くださった方もいましたね(笑)
普通に本買っただけじゃ、本人にそんなこと言わないでしょう?わざわざアプローチをくれるってことが、とても嬉しいです。
こうして世に本を出したことで、ほっとこうち(高知県の情報誌)さんが取り上げてくださってメーカーさんから仕事の依頼が来たり、お店の内装にって買いに来てくれたり、想定外の出来事、ほんとにたくさんありました。
今朝もね、神戸から電話あったんです。本見ましたって。リースの注文くださいました。
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坂本
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ほんとですか!すごいですね!
今回、本を出したことによってお店のプロモーションにもなって、知名度が上がったり、実際に教室の生徒さんもかなり増えたとお聞きしたりと、僕らも“本”の可能性を再確認させていただきました。ありがとうございます。
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山中
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そうですね。「本の力」すごいと思いました。
リースをつくる人が増えた気が、本当にするんですよね。
素敵だなと思います。ありがとうございました。
著者の山中さんと。
インタビュアー:坂本(左)島村(右)