『炭都』岩﨑拓郎(東京都在住)
郷里を離れた学生時代、新聞社での暗室アルバイトをきっかけにモノクロ写真と出合った。銀塩の質感に魅了され、初めて中古の一眼レフカメラを買った。22歳のときだった。炭鉱をテーマに撮影を開始したのは1994年。当時すでに、日本の石炭産業は「斜陽化」と言われた時代を過ぎ、「どのように終焉を迎えるか」という最終局面にあった。わずか3年後の97年、国内最大の三池炭鉱が閉山すると、01年には長崎の池島炭鉱も最後の採炭を終えた。これをもって、最盛期は500以上あったヤマが九州からなくなった。そうして02年、太平洋炭砿がその歴史に幕を下ろすと、戦後復興の礎を築いた石炭産業が、この国から姿を消したのである。ここに収められた写真は、そんな国内最後の3つのヤマの閉山前後に撮影されたものだ。
炭都に息づくノスタルジックな風景が、僕はストレートに好きだった。その土地に映し出された、荒々しくも、明るく気さくな人間模様も、被写体として魅力に富んでいた。歩けば歩くほど、そう感じた。閉山からおよそ20年の年月を経た今もなお、僕にとっては決して褪せることのない光景ばかりである。とても多くの人々、人生の先輩との出会いがいくつも重なり、様々な喜怒哀楽の表情を垣間見た。その人々との出会いがなければ、当然のことながらこれらの写真も存在し得ない。感謝しても感謝しても、感謝しきれない気持ちでいっぱいだ。出会いのすべてに、いま一度、あらためて感謝の意を記したい。本当にありがとうございました。 (あとがきより)
《お客様の声》
今回の写真集は、私にとって2册目の出版となります。最初の1冊目は、都内の出版社に依頼しました。校正作業については、じかに足を運び、フェイス・ツー・フェイスでした。それにくらべると、リーブルは高知であり、距離的な不安はないといえば嘘になります。
しかしながら、事前の対応の中で、とりわけ印刷のサンプルを作成してくれたこと、そして、このサンプルを通じて、御社の丁寧な説明、当方が納得いくまで行う姿勢、印刷工担当者と相談しながら対応してくれる姿勢。そこに強く共感しました。
これまで大手も含めて5社から6社は出版社を回っていますが、契約前にサンプル印刷をしてくれるのは、ここだけと思います。それほど、印面に対する熱意が感じられたのです。主にメールでのやりとりが行われましたが、私の場合、職業柄、メールのほうが都合が良かったので、あまり不自由さはかんじませんでした。
またデザイン・印刷とも、十分私の期待に応えてくれました。サンプル印刷のときに、担当者より、「モノクロームの映画を見ているよう」という評価をいただいたときに、われに返る思いがしました。僕自身、映画のような、物語を作りたかったからです。印刷に関しては、最後の最後のまで、当方の希望以外にも、積極的に新たな提案があり、最終的には、リーブルの提案印刷によってつくることになったのです。
本の仕上がりはとてもよかったですし、なにより、うれしかった。今回の写真集は、炭鉱をテーマにしたモノクロ写真ですが、この本を献本したある人は、「本当に(石炭の)ススが手につきそうな写真集だ」と言われ、ここでもはっとした思いです。
今回の写真集は、私のいわば青春時代に撮影されたカットをまとめたものなので、そういう特性上、「ああ、ここまで撮影を続けてきて良かったな」と納得のいくできばえだと思います。
著:岩﨑拓郎
定価:3080円(本体:2800円+税)
スーパーブラック印刷
ISBN978-4-86338-120-9