絵本を読んでいただいた方から「救われました。」と、手紙をいただきました。私の思いを私が思った以上の形で絵本として完成させていただいたリーブル出版の皆様にまずは感謝を述べたいと思います。
「自己免疫疾患による全身脱毛症ですね」と、息子の病状を大学病院で告げられたのは2019年になったばかりの肌寒い冬のことでした。一通り治療法を聞き、久しぶりに市内に来たので帰路につく前に繁華街のデパートによって行くことにしました。2歳になる息子の手を引き歩いていると、前から歩いてきたご婦人に「あら~髪の無か。」と何度も指を指された。私は頭が真っ白になり、声も出せず、動けなくなりました。そんな私を笑顔で見上げる、息子を見て胸が締め付けられました。
絵本を作ろうかと漠然と考え始めたのはこの頃からだったように思います。しかし、当時は周りの視線や心ないからかいに対応することでいっぱい、いっぱいでした。
そんな時、公園で息子のことをからかっていた友達にそれはダメだと諭し、謝らせるために私に声をかけてきた少年がいました。その姿を見たときに、人の思いやりと温かさを感じました。それから、人の思いやりや温かさに目を向けるようになると世界が一変しました。からかいがある分、優し言葉や対応をしてくれる人たちもいる。そんなふうに相手を思いやれる人がより多くなって行けば、きっと未来は良くなると思いました。
それまで漠然としていた絵本がはっきりと形を帯びました。病気を知ってもらおう、人と違っても何もおかしくない。違いを認め合える世の中になってほしいという思いで絵本を作成しました。絵本は従妹の協力で完成したものの、絵本の増刷、販売はどうしていいのか分からずにいました。そんな時に増刷から販売まで対応してくれるリーブル出版に出会いました。メールや電話のやりとりですぐにここで絵本を販売したいと思いました。
金額的なこともありますが、一番はリーブル出版の代表取締役である坂本様の親身になって話を聴き、対応いただいたことでした。契約後も様々なご提案や心強いお言葉をいただき、出版への不安が薄らぎました。
できあがった絵本を読んで、多くの方から「泣きました。」、「感動しました。」と感想をいただきました。その1つ1つが、この絵本を作って良かったと思えるものでした。
最後に『・・略・・幼い頃、知的障害をもつ弟がいじめられていても助けることができなかったことを思い出すたび、今でも呼吸が苦しくなります。「つるつるのおとうと」では最後、からかった子たちが謝りに来ますね。そのことにとても救われました。そして、あとがきを読んで、実際にあったことだと知ってもっと救われました。』と、お手紙をいただきました。改めて全国の幼稚園・保育園、小学校に絵本の寄贈を進めていこうと決意しました。
森 孝文
『つるつるのおとうと』
さく:しりとりかぞく
え:T.taru
上製本 B5(262mm×187mm) 20ページ
定価:1485円(本体:1350円+税)
ISBN978-486338-379-1