私は、兄と私の思い出をほぼ2週間で書き上げた。書くことは楽しく、沈んだ心がどんどん軽くなった。思いきって自費出版先を探した。
高知のリーブル出版は地方ながら素晴らしい本をたくさん出版している。会社のポリシーも素晴らしい。一か八か原稿を送ってみた。すぐに 「長崎弁の兄の言葉が懐かしく、登場人物が生き生きと描かれている。日々を丁寧に生きることの大切さを感じた」 と返事をくれた。多分、私は、これで一般配本での出版を決意したと思う。
自分と身近な人だけに伝わると思っていたプライベートな思い出の本が、私たちを知らない人にも何かを与えられることに勇気をもらった。分からないことにもすぐに回答があり、8月の初盆までに出版するという特急並みの要求にも応えてくれた。表紙の私の描いた絵も予想以上のきれいな群青色で、読者の多くの方から飾りたくなるような素敵な本と言っていただいた。リーブルさんの印刷技術の賜物だ。
出版後、読んでくださった人からたくさんのメールや手紙が届いた。最も多いのは「内容がすーっと入って心の底まで届く。そばで話してくれているみたい。さらっと読めるがずっと心に残る。」などリーブルさんのアドバイスで時系列を整え構成が良くなったから分かり易いのだと思う。次に、「死別がテーマだが読み終わった後に爽やかさが残る。毎日の一瞬一瞬は素晴らしく愛おしいものだと気づいた。これからもっと家族を大切にできると思う。」など、読者の皆さんに希望を与えられたことが嬉しい。私と同じように癒やされ、前へ進めるようになった思いまでも共感してもらえたことは、作者として最高の喜びである。
リーブル出版書籍の中の一冊になり、フェイスブックや、ホームページに自分の本が紹介されているのを見たときは、嬉しくて、スクリーンショットをしてしまった。小学校の卒業文集に本を書く人になりたいと書いたことが思いがけず実現し、忘れていた子どもの頃の夢を遅まきながら追いかけてみようかなと思っている。あと一冊か二冊誰かにみおくられるまでに書けるかな。書き続けてみようと思う。
『おみおくり Farewell』
著 首藤順子
並製本 四六判 150ページ
定価 1300円+税
ISBN978-4-86338-310-4