小説を書いて、自分の世界観に基づいた作品作りは楽しいものでした。ストーリーを書き終えてから、取材、考証、挿絵の漫画制作等の肉付けは、気持ちが昂りました。
出版社を選ぶ際は、最初は県外にも問い合わせたのですが、やりとり等を鑑みて地元の出版社にしようと思いました。特に漫画の制作過程で、とある県外の漫画家さんから、地元を重視した方が良いとの助言に従い、常に地元に関わりのある人や会社にお願いしようと思った次第です。
リーブル出版で作った感想ですが、初心者である私に対して出版社の皆さんが、至極親切丁寧にメールや電話で対応してくれたのは有難い限りでした。特に契約書に関して、会社間だけでなく挿絵をお願いする漫画家さんとの分まで作成頂いたのは非常に助かりました。デザインに関しては、カバー裏に本編の挿絵をアレンジして劇画タッチに採り入れたのは面白いアイディアだと思いましたね。こちらも宣伝するときのアピールポイントの一つになっています。
この挿絵の漫画は拘りました。挿絵という限られたページに情報を詰め込める技量を持つ方に描いて欲しかったのです。担当してくれた「上北ふたご」さんは、大手の漫画雑誌に有名なコミカライズの連載をして、限られたページ数の中できちんとお話を描かれているのが、起用の決め手でした。
「日下茂平」を、今風な絵柄で子供向けの作品にしようと思ったのは、高知県に実在した有名人の一人として広く人々に知って欲しいと思ったからです。高知県の歴史上の人物は、戦国時代の「長宗我部元親」や「山内一豊」を挙げると、次は江戸時代の幕末に登場する「坂本龍馬」まで待たなくてはなりません。その間の江戸時代が空白になっているのです。史実の茂平は、「暴れん坊将軍」の吉宗の時代に活躍した人物です。私の作品では諸事情で、時代を100年ばかり遡らせていますが、茂平の生き様を活き活きと描くことで、「日下茂平」という人物を現代の高知の若い人たちに改めて認知してもらいたかったのです。
作品は伝奇小説ですが、テーマは普遍的なものを追求しました。「愛することと恋すること」「力を得ることで失うもの」「他者との距離の取り方や付き合い方」等々……。いつの時代も、人は誰かに恋をして、愛を育み、そして失い、別れて行くのだと思います。その時代を精一杯生きること。それを「日下茂平」という人物を通して、少しの間で良いので感じ取ってもらえれば幸いです。
『もへぇ、修行中』 宮崎文敬 さん(高知県在住)