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田舎は、「田舎らしく」ないといけないの?

デザイナーをしていると、地方が都会の真似をしてもしょうがない、と言われることがあります。
その地方らしさを押し出していくべきだ、と。

確かに都会から眺めた地方は、そうであってほしいのかも知れません。観光や移住促進の観点からするとそれが正解なのだと思いますが、なんだかちょっと寂しくなるのは私だけでしょうか。

昨夏、デザイナー仲間と瀬戸内に浮かぶ島・大三島にある伊東豊雄ミュージアムに行っていたのですが、そのときの展示が「地方創生」をテーマにした内容でした。館内で上映されていた動画の中で、島の子どもたちにインタビューをするシーンがあるのですが、「島に欲しいものは?」と聞かれた子どもたちの答えは、「スタバ」「イオン」「おしゃれなネカフェ」といったものでした。そこで生まれ育った子どもたちからすると、「島らしさを発信したい」とか「昔のにぎわっていた風景を取り戻したい」なんて思っていないのです。

観光、Uターン、Iターン。それも大切だと思いますが、“何ターン”もせず、その土地に住み続けている人からすると「都会から求められる田舎らしさ」に飽きているのではないでしょうか。少なくとも私は飽きています(あ、今いる場所に飽きているという意味ではありません。私は地元・高知を愛しています!)。大切なのは、その土地に住み続けている人たちが、都会に劣等感を感じることなく豊かに暮らすことができるかどうかだと思うのです。たとえそれが、都会の真似をすることや全国チェーンの出店によって、住む人の満足度が上がるのであればそれでも良いと私は思っています。

デザインにおいても同じで、高知県民が高知らしいデザインを望んでいるとは限りません。都会的で洗練されたデザインを望んでいることも往々にしてあります。私自身もそういうデザインが好きです。都会に求められているものではなく、地方に暮らす人自身が喜ぶもの、求めているものは何なのか。すぐに結論が出るものではありませんが、その意味で地域に寄りそうデザインができればいいなと感じています。

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