デザイナーと編集者は似た職業だと感じます。どちらも表現者ではありません。誰かの思いを「代わりに届ける人」だと思います。そして届けるために、どのような表現にすれば良いか、どんな世界感を作ればいいかというイメージを自分の中に持っています。それが「意志=ビジョン」です。デザイナーとオペレーターの違いは「意志」があるかどうかだ、と思っていますが、この意志=ビジョンこそが原動力となり、表現方法を試行錯誤したり、不足している原稿を依頼したりといった行動力につながります。
「用意された原稿を組む」のはオペレーターですが、「どんな原稿を用意すればよいかを決める」のがデザイナーや編集者です。消費者目線や読者目線で何度も自分に問いかけ、不足していれば原稿を要求したり、または自分で作成したりといったことが必要です。「ビジョンを持ち、それに近づけようとする人」が編集者でありデザイナーだろうと感じます。
雑誌『Re:s』や、秋田県発行のフリーマガジン『のんびり』などの編集長を務めた、藤本智士さんは、著書『魔法をかける編集』でこのように述べています。
編集とは魔法であり、編集者は魔法使いだと本気で思っているのですが、これまでは一部の人だけが持つ特権的能力として扱われてきたように思います。しかし編集力というのは、すべての人がすでに備えている能力であり、意識することで鍛えられるものなんです。
藤本さんは、編集という仕事が転じて、地域おこしや商品開発などに多く携わっています。「ビジョンを持つ」ことを繰り返し行ってきた編集者だからこそなし得たことだろうと感じます。私たち出版社も、常に未来に視点を置き、そこに謙虚に立ち向かっていくことを続けていきたいと思います。