「ルックバック」というもの凄い映画があります。
原作は「チェンソーマン」などで知られる藤本タツキさん、監督は押山清高さん。
漫画家を目指す2人の少女の物語ですが、この映画、感動しすぎて数日後に映画館でおかわりしました。
さらに最近配信が始まったので、すでに3回ほど観たのですが、その感動は薄れず毎回泣いてしまいます。
(単純に涙もろいだけの可能性大ですが)
私は、日本の2Dアニメーションが大好きです。
3Dでも大好きなものはたくさんありますが、
2Dでないと描けない表現が数多あることを忘れてはならないと思っています。
これを言葉で語ろうとすると陳腐になりそうなのですが、
一つ言えることは「絵の力」だと思います。
2Dは「絵」です。「絵が動く」のです(アニメーションなので当たり前ですが)。
3Dは「モデリング」があり、それをプログラムで動かしています。
2Dアニメの場合は、絵を動かす際、誇張したり、逆に省略したりといった
いわゆる「外連味(けれんみ)」があるのです。これを3Dで表現しようとすると非常に困難です。
ここに、2Dの魅力が詰まっていると私は思っています。
「ルックバック」の劇中で、主人公の藤野が、
喜びのあまり雨のなか駆けていくシーンがあるのですが、
とにかくめちゃくちゃ変な走り方をするのです。でも感情が溢れるとはこういうことだと分かります。
セリフもなくただただ駆けていくだけ。それなのに泣くほど感動してしまいます。
胸が高まり、心が躍る。それが全身にありありと表れていて、どんな表現よりも伝わってくるのです。
▲映画を観た後に、すぐに購入した単行本。
▲映画のこのシーン、本当にすごいんです!(語彙力失います)
同じように、走るシーンで印象的だったのは、高畑勲監督の「かぐや姫の物語」で
かぐや姫が帝から逃げるように走るシーンです。毛筆で殴り書きをしたような作画で、
まさかアニメーションでこんな表現が可能だとは、と衝撃を受けました。
(ちなみにルックバックの押山監督は、スタジオジブリで原画を担当されていたため、ジブリとも深い関わりがあります)
高畑勲さんは、「絵が動く」ということに凄くこだわられた方でした。
アニメーションだから絵が動くのは当然と思われがちですが、
高畑さんは、「美術」(背景)と「動画」(人物など)が異なるタッチで描かれていることを非常に嫌いました。
「一枚の絵」が動き続けるようなアニメーションを作りたいと願い、
「ホーホケキョとなりの山田くん」では全てが鉛筆と水彩で描かれたようなアニメーションに挑み、
「かぐや姫の物語」では毛筆で描いたような表現に挑戦しています。
かぐや姫は、その年のアカデミー賞にノミネートされましたが、受賞にはいたらず、その年の長編アカデミー賞は「ベイマックス」でした。
世界的に見ると、3Dアニメーションしか評価されなくなったことを、高畑監督は嘆いておられました。
(ベイマックスの受賞自体に異論はありません。ベイマックス大好きです!)
人が描き、人がつなぐ。それが日本のアニメーション。
ルックバックのポスターに付けられたキャッチコピーは、「描き続ける」でした。
その映画化だからこそ、「絵で人を感動させたい」と願い、押山監督が細部にこだわり抜いた作品でした。
お時間あればぜひ観てみてください。