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浮世絵のディレクション

「べらぼう」で浮世絵に注目が集まりつつあるかと思いますが、いわずもがな、浮世絵は版画であるため、「絵師」「彫師」「摺師」の役割があります。

世に名の知れた、北斎や歌麿、広重といった浮世絵師は「絵師」にあたりますが、浮世絵は、優れた掘師と摺師の存在があってこそ完成するものです。絵師には、原画を描く役割があるのはもちろんですが、彫師、摺師に細かな指示を出します。これは現代でいうところのアートディレクターにあたります。

例えば、私の好きな絵師・歌川広重の浮世絵で、「大はしあたけの夕立」という作品がありますが、この極細の雨は完全に「彫師泣かせ」ですよね。雨は彫られているのではなく、彫らずに残された線です(凄まじい技術ですよね)。そして、空には大雨を予感させる美しいグラデーションがかけられています。これも、「摺師の塩梅」で左右される難しい技術です。絵師はそれら全てをディレクションする立場にあります。現存する浮世絵では版を重ねるごとにグラーデションの色が変わっていたり、版が微妙に異なるものも存在します。おそらくディレクションが原画絵師の手から離れたものも数多くあると想像できます。

 

ちなみに、著名な画家・ゴッホは浮世絵好きとしても知られていて、この作品も模写しています。

 

 

すぐれた芸術家のそばには、それを支えた名も無き優れた技術者たちがいたのだろうと思うと、感慨深いものがありますね。

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