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理性と感性(2)

感性と似た言葉に「センス」があります。
辞書で引いてみると、どちらにも「物事の機微を感じ取る能力」といった語釈があります。

では、このセンスとは何なのでしょうか。

私も一応デザイナーを生業としているため、打ち合わせ時などに「やっぱりセンスがある人は違うね!」とか、「島村さんみたいにセンスがないからパッと良い案が浮かんでこない」などと言われることがありますが、その度に「いやいや、悩み抜いた末に出てきた案なんですけど…」と心の中で呟いています。

 

「くまモン」の生みの親で知られるグッドデザインカンパニー代表の水野学さんは、
著書『センスは知識からはじまる』でこのように述べています。

センスのよさとはミステリアスなものでもないし、特別な人だけに備わった才能でもありません。方法を知って、やるべきことをやり、必要な時間をかければ、誰にでも手に入るものです。

また、元メジャーリーガーのイチロー選手も、あるインタビューで、

僕は天才ではありません。なぜかというと自分がどうしてヒットを打てるかを説明できるからです。

と発言しています。

 

そう、つまりセンスとは知識やトレーニングで身につくスキルだということです。例えファッションセンスのない人でも、1年間あらゆるファッション雑誌に目を通し、実際に気になる洋服を着て、周囲の人にも印象を聞くなどし続ければ、かならず「センスのいい人」になるはずです。

仮に私が「パッ」と閃いたように口にする良案は、単なる経験値です。それまでに似たような問題に直面し解決し続けてきたノウハウを応用しているにすぎません。センスは身につきます。必要なのは知ること、想像することです。

これらのことは水野学さんが著書の中で本当に上手に言語化してくれています。そしてその言葉は、私などよりもっと多くかつ濃密な経験を重ねたからこその説得力があるものです。

日本企業のリーダーの多くは、このセンスや感性を使って意志決定をすることが苦手になってきているように思います。感性という一見あやふやな能力を使うことが、実は経営やリーダーシップにとって重要な要素となりうるのです。

続く…

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