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理性と感性(1)

【日刊リーブルレターVol.15】
私がデザイナーとしてリーブルに入社した当初、当時の社長によく言われていた言葉があります。デザインとは「理性と感性の融合だ」と。
言葉の意味は分かるのですが、真の意味が理解はできるようになったのはここ数年のことです。そんな「理性と感性」について数回に分けて書いてみようと思います。

当時の私は理屈で物事を考えるタイプで、デザインする際もとにかくたくさんの情報集めて整理し、キャッチコピーも100個ほど考え、その中から最善と思われる表現を組み合わせて打ち出していました。その方法でそれなりに仕事ができていたため、私自身は「デザインとは情報整理だ」と考えていました。

しかし、そんな風に考えに考え抜いた作品を、クライアントに見せた際の反応がイマイチなことがときどきありました。そんな時は「これはこういうコンセプトで作っていて、それを暗に表現するためにこの配置や色づかいになっています」みたいなことを説明すると「あ〜、なるほど。そう言われるとそうですね。なんだか良く見えてきました」という反応が返ってきたのですが、これは絶対ダメですよね。
説明しないと伝わらないようなデザインはデザインと呼べません。

見た瞬間に「わ!すごい!」「わ!かわいい!」という反応が返ってくるべきなのです。説明なんてナンセンスです。芸人が伝わらなかったネタを後で説明するのと同じぐらいナンセンスです。

ただ、私にとって幸運だったのは、クライアントと直接対面してその反応を直に感じる機会があったことです。これがあったからこそ自分に足りないものに気づくことができました。そこからはもっと自分の感性を使った判断を付け足すようにしました。

私がやった手法は、「直視しない」ことです。例えばポスターであれば、そのポスターを部屋のどこかに貼って、チラ見しながらその前を通り過ぎるだけ。立ち止まらない。直視せず、視界にいれるだけ。それでも目を引かれるものになっていればOK。「何か楽しそう」とか「理屈抜きにかっこいい」とか、そういった感情が湧き上がってくるかどうか、自分の中の「感性」に問い続けました。

その辺りから「理性と感性」というものがおぼろげながら見えてきたように思います。
理性と感性の話を語る際に外せない本がいくつかあります。
まず紹介したいのはコピーライター谷山雅計さん著の『広告コピーってこう書くんだ!読本』です。コピーライティングに関する本ですが、広告業者に限らず、どんな人にも響く内容で、かつとっても簡便な言葉で綴られているため誰にでも読みやすい本です。
谷山さんはキャッチコピーを書く際は、「理性で作って生理で判断する」という言葉を使われていました。まさに「理性と感性」ですね。

続く…

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